愛してるって言って
「夢じゃないよ。ほら」



そう言って蒼ちゃんはあたしをそっと引き寄せる。



「あったかいだろ」


「うん」


「つーか、夢だったら困るなー」


「うん、あたしも」



あたしがそう言うと蒼ちゃんは「ははは」と笑いながらあたしの髪をくしゃくしゃと撫で回す。


そのまま離れていこうとする蒼ちゃんの服の裾を無意識に掴んでいて。



「電話するから」



あたしの手にそっと蒼ちゃんのそれを重ねて離される。



「じゃあな」


「……うん」



蒼ちゃんが玄関を出るとすぐに、ガチャンとドアの閉まる音が響く。


しーんと静まり返ったこの空間にいると、ほんとにここに蒼ちゃんがいたのだろうかと思ってしまう。


けれどあたしの身体に残っている温もりが、ちゃんと蒼ちゃんがここにいて、あたしを抱き締めてくれていたことを教えてくれていた。
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