タイムトラベラー・キス
「ちょっと、大丈夫?」
「お、おう、ちょっとびっくりして。女の扱いに慣れてる訳ねーだろ」
「えー、嘘だあ。慣れてるって」
今は野々村くんの彼女でもないのに、なんだかすねてしまう。
ああ、ヤキモチなんて妬いたのは久しぶりかもしれない。
「慣れてねーって。……慣れてないから、今日のために勉強したんだよ。……だせぇこと言わせんな」
私から窓の外に視線を移し、ぶすっとしたような、照れているような顔を見せている。
どうしよう、今の言葉、録音しておけばよかったってくらいに嬉しい。
胸の鼓動が速くなって、おさまりそうにもないよ。
私、やっぱり、この人のことが好きだなって。この一瞬にそう実感した。
「……ありがとう」
……今日のオムライスはいっそうおいしく感じたのは、気のせいではない。