タイムトラベラー・キス

野々村くんの言葉を聞いて、先輩たちは明らかに動揺していた。
二股は誤解であること、自分たちがみっともないことをしていると気づいたのだろうか。

ユカは怒りでか恥ずかしさでか分からないけど、顔を赤く染めていた。


「……もういい、みんな教室に戻ろう」


先輩たちはバツが悪くなったのか、しおれた花のように勢いが消え、この場から去って行った。
体育館裏には野々村くんと私の二人きりになる。

誰もいなくなったことを確認すると、野々村くんは私の前でしゃがみ込み、その全身で私を包み込んだ。
ほんのりと汗のにおいと、野々村くんの香りがする。


「どうしてここに……?」


「浅野がうちの教室まで来て、晃に助けを求めてた。落書きの内容を聞いて、俺のせいで都宮が誤解されてるっ知って……いてもたってもいられなかった」


「野々村くんは何も悪くないよ。むしろ、先輩たちにあんなこといって、野々村くんが誤解されちゃう……」



< 205 / 276 >

この作品をシェア

pagetop