タイムトラベラー・キス

野々村くんは「おいしい」と何度も言いながら、あっという間にお弁当をたいらげた。

そうそう、野々村くんはいつも私の作るご飯をおいしいって食べてくれるんだった。
それがうれしくて、ついつい作りすぎてしまうんだよね。

ささやかな幸せが、かけがえのないものだって今ならわかる。
その小さな幸せが積み重なって、私たちの未来が出来上がるんだ。


……どうして、彼との結婚をためらったのだろう。
今なら、未来に帰ってすぐにでも入籍したいくらいの気持ちだよ。


「ごちそうさま、すっげーうまかった」


「良かった!よかったらまた作ってくるよ」


「……なんだよそれ。そんなこと言われたら、変に期待しちゃうだろ」


「期待って?」


野々村くんの日焼けした顔がほんのり赤色に染まる。
そして、私のほうをまっすぐに見て、こう呟いた。

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