殺戮都市~バベル~
息が出来ない……身体が動かない。


いや、この獅子の死にざまを見て、目を逸らすなと俺の心が命令している。


日本刀を下ろす事も出来ずに、死亡して武器が消え、地面に前のめりに倒れた黒井の姿をずっと見ていた。


雨が……地面に溜まり初めて、水位がゆっくりと上昇しているのがわかる。


真っ赤な液体が雨に混じり、流されて行く。


黒井の言う通り、俺は狼かもしれない。


獅子には勝つ事が出来ない狼は、群れで獲物を狩る。


誇り高き百獣の王が黒井なら、俺は仲間と共に戦う群れの狼。


それが俺の戦い方だと、この男に改めて教えられた。


この決闘の結末に、歓喜の声を上げる人は誰もいなかった。


俺が死んでも、黒井が死んでも、この空気は変わらなかっただろう。


そんな中、一人だけ声を上げる人物がいた。







「な、何死んでんのよ!南軍最強が聞いて呆れるわ!こんなガキ一人殺れないで、何が荒獅子よ!ほら、早く起きて殺しなさいよ!」







反抗グループの制止を振り切って、黒井に駆け寄ったのは……明美さん。


こともあろうに、死んだ黒井の右腕を掴んで、無理矢理引き起こそうとしたのだ。
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