殺戮都市~バベル~
「順一!?は、放して!あなたまで溶けるわ!」


「嫌だ、絶対に離さない。明ちゃんと死ねるなら……それで良いさ」


二人が何を話しているか、聞こえた気がした。


やけにゆっくりと落ちているように見えて、俺は必死な叫んで手を伸ばすけど、狩野と名鳥は満足そうな表情で。


狩野に掛かった毒液が、名鳥の身体も浸食し始めて溶けて行く。


もう、回復も出来ないくらいに溶けた二人が落下するのを見ながら……俺は伸ばした手を引っ込められずにいた。


大切な人を守りたいという想いで名鳥を守った狩野と、大切な人を一人では死なせないと狩野を抱き締めた名鳥。


亜美と優が、この二人の行動に影響を与えたんじゃないかと、思わずにはいられなかった。


誰も、何も言葉を発する事が出来ない。


そして、しばらくして……塔の下の方から爆発でも起こったのかというような轟音が聞こえた。


ビショップを倒す事が出来た。


だけど、その為に塔に入った人の半数が犠牲になってしまったのだ。


三戸桜良、大友葵、狩野明、名鳥順一……。


四人が死亡して、残ったのは四人。


それでも、これで終わったわけではなかった。
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