殺戮都市~バベル~
沼沢に助けられ、階段に着地したばかりの俺には、それをどうする事も出来ない。


いや、俺だけじゃない。


恵梨香さんも吹雪さんも、沼沢も……名鳥本人でさえも、その最後の悪足掻きとも言える行動をどうする事も出来なかった。











ただ一人、狩野を除いては。


名鳥が心臓を撃ち抜けなかった時の事を考えて、飛び込んでいたのか……。


噴射された毒液を、全身で浴びて名鳥を守ったのだ。


「明……ちゃん?」


「良かった……順一……」


ビショップの胸に当たり、落下を始めた狩野。







「この……蛇野郎がああああああっ!!」






名鳥の怒号と共に取り出された槍が、ビショップの心臓に突き立てられる!


「グオオオオオオオオオオッ!!」


という断末魔の悲鳴を上げて……柱に巻き付けられていたビショップの胴体が緩まり、落下を始めたのだ。


「狩野っ!」


階段から、落下する狩野に手を伸ばすけど……当然届くはずもない。


全身が溶け始めた狩野が……フッと笑みを浮かべた瞬間。


ビショップの身体を蹴って、狩野に追い付いた名鳥が、そっと抱き締めたのだ。
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