殺戮都市~バベル~
「ゲホッ!」


人が食われたのを見て、胃から逆流する何かを吐き出すと、それは血だった。


痛みが激しくて、苦しくて、逃げ出したいのに逃げられない。


そんな俺に、化け物は迫って来る。


金網が中途半端に破れ、それに引っ掛かった俺の足を掴んで、強引に引っ張った。


ビリビリと学ランが破れて、逆さ吊りにされた俺の腕を化け物が掴み、大きく口を開く。


頭じゃなく、脇腹に噛み付こうとしているのか。


「かはっ!」


息が出来なくて苦しかったけど、やっと出来たと思ったら、化け物に掴まれて身動きが取れない。


「は、放せ……」


何とか押し出せた声は、その一言だけ。


だけど、化け物がそれを聞いてくれるはずがない。


たとえ手を放したところで……俺は化け物の口の中だ。


そして……。










化け物の口が閉じられる寸前、俺は高架の上に誰かが立っている事に気付いた。


逆光で、黒い影しか見えないその人影は、軽やかにジャンプして、高架から飛び下りたのだ。


と、同時に、俺の脇腹に走る激しい痛み。


「ああああああああああああああああああああっ!!」


身体に食い込む化け物の牙。


想像を絶する痛みに、出せないと思ってた声が辺りに轟いた。
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