殺戮都市~バベル~
「初めて会いましたけど……気のせいじゃないですか?」


とぼけているわけじゃない。


本当にこの人とは会った事がないのだから。


でも……。











「あ、やっぱり知ってた。そっちの子、弓長の親父が手を出してた女と一緒にいた子供だろ。で、お前の声もなーんか聞き覚えがあると思ったら……親父が俺を呼んだ時に聞こえた声にそっくりなんだよなぁ」











ニヤリと笑みを浮かべて、男は俺にゆっくりと近付いて来たのだ。


まずい……俺じゃなく、亜美を知っていたというのは完全に想定外だった。


それに、まさか弓長が呼んだやつだったとは。


「親父がさあ、俺を呼ぶ時ってのは決まってんだよね。モノにしたい女を追い込む時と、手に負えない敵と戦ってる時だ」


そう言いながら、武器を取り出してヒュンヒュンと空を切る。


細い西洋の剣……レイピアを構えたのだ。


弁解の余地は……ないか。


その二つしかないって言うなら、俺と戦ったとしか思われないだろうから。


「亜美、ちょっと隠れてな」


手を放し、亜美から離れた俺は、左手で日本刀を抜いて構えた。


体調は万全、だけど利き腕じゃない方で戦わなければならないのは厳しいな。
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