殺戮都市~バベル~
バタバタと、落ち着きなく路地から飛び出した、一人の中年男性。


その姿には……いや、その頭部には見覚えがある。


「わしだよ!ほら、この街に来た時に一緒だった!」


そう、チュートリアルまで一緒にいた、バーコードの親父だ。


あの時姿を見なくて、どうなったかと思っていたけど……生きていたのか。


「……おっさん。生きてたのか」


大して長い時間一緒にいたわけじゃないし、何より奈央さんが死んでしまった直後で、再会してもそれほど感情の昂りなんてないんだけど。


「ああ、なんとかな。それよりそのお嬢さんは……何があったんだ?」


このおっさんに言ったところで、奈央さんが生き返るわけじゃないけど……一緒にこの街に来た、明美さんが殺したんだ。


おっさんが知らない相手じゃないし、知らせておいた方がいいかもしれないな。


「明美さんだよ……一緒にいただろ?あいつが!俺を目の敵にして、俺の大切な人を二人も殺したんだ!!」


名前を口にするだけで怒りが込み上げて来る。


あんなやつと関わったばかりに、死ななくても良い人達が死んでしまったと。


「明美さんか……気性が荒いかなと思ったが、そこまでするとはな。この街で歪んでしまったんだろうなあ」
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