殺戮都市～バベル～
戻って来たら、奈央さんの墓に参りに来る。


そう約束をして、おっさんとフレンド登録をした。


「安心してくれ真治君。人の信用を得る為に、自分が何をすべきかはわかっているつもりだ」


おっさんは、チュートリアルで自分の影と戦わなければならなかった時でも、話し合いでどうにかしようとしていた。


争いを好まない、この街には似つかわしくない人柄だと知っているから。


「任せたよ……見届けたいけど、俺は仲間を助ける為に行かなきゃ」


人が死んでも、悲しんで泣いている暇さえ与えてくれない。


この街はつくづく残酷だと思い知らされた。


「ああ、任せてくれ。それにしても真治君……見違えたな。最初はそこらにいるただの高校生に見えたが……こうも変わるものか」


そんなに変わったかな。


だけど、変わったところで人一人守れないんじゃ、変わる意味はなんだと思ってしまう。


「俺は何も変わってないよ。ただ、人を殺す事に抵抗がなくなった殺人鬼になっただけだ」


「いやいや、そうじゃない。だって、人が死んでこんなに悲しんでいるじゃないか。キミは殺人鬼なんかじゃないよ」


黒井から奈央さんの亡骸を受け取ったおっさんは、力強く、俺にそう言った。


「……奈央さんを、よろしく」


これ以上いると、別れるのが辛くなる。


俺は黒井の背中を押して、街の中央部へと歩き出した。










奈央さん……さようなら。





< 553 / 1,451 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop