今しかない、この瞬間を
「男?」

「えっ?」

「好きな人と上手く行きそうなの? 良かったじゃん。」

「ちっ、違うよ!!」

「違わないだろ? この前もどっか行ってなかった?」

「.......。」

「頑張れよ、ずっと好きだったんだろ?」

「違うよ。」

「へ?」

「違うって言ってるでしょ!!、バカ。」


あれ? なんでそんな顔するんだ?

あいつ、今、泣きそうになってたなかったか?


それに、そんな全力で否定することないじゃん。

この前、田澤さんと出かけてたのは事実なんだから。


でも、あの様子だと本当に違うのかな.......

だったら、誰なんだよ。

わかんねーよ。

あぁ、失敗した。

傷付けちゃったかな。


プイっと振り向いて、バスの子供たちの後を追いかけて行くあいつの背中を眺めながら、後悔する気持ちに打ちのめされそうになった。

あ〜あ、やっちゃったよ。

最悪じゃん。

俺、本当に何やってんだろう.......


「上山コーチぃ、こんにちは~!!」

「あっ、おぉ、こんにちは。」


落ち込んでる暇もなく、次のクラスの小学生たちがやって来た。

ダメだ!! 凹んでる場合じゃない。

さっさと気持ちを立て直せ!!

次の時間のお迎えの時に、謝ればいいんだよ。


そう自分に言い聞かせ、ドキドキしながらレッスンを進めた。

だけど、次の時間に階段を上って来たあいつは、俺と目も合わせてくれなかった。


声をかけるタイミングすら見いだせないまま、再びあいつの背中を見送っている自分が、本当に嫌になる。

俺って、マジで恋愛には向いてないんだろうな.......


教えてくれよ、朱美さん。

「幸せは待っててくれない」って、どういう意味なんだよ。

やっぱり俺には無理なのかも。

このままじゃ俺は、幸せなんかになれないよ.......
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