Different Real


急いで彼の手を取り立ち上がる。

「すいません、ありがとうございます!」

「いや......。傘、使って。」

彼は自分の差していた青い傘を私の方に傾けながら言った。

「え!?だ、大丈夫です!初めてお会いしたのにそんなことまでして頂くわけにはいかないです!」

焦って首と両手をブンブンと左右に振る。

それなのに彼は首を少し傾げて不思議そうな顔をした。

「初めてじゃないよ?」

「...ん?」

「隣の席でしょ。榎本さん、だっけ。」

隣の席......。

私の席は窓側で隣は1つだけ。

綺麗な黒髪、隣の席、

「神尾くん...?」

そう言うと彼はクスッと静かに笑った。

サラリと揺れる彼の髪がキラキラと眩しい。

傘から垂れた雫が彼の髪にかかっていた。

「なんだ、気づいてると思ってため口で話しかけちゃったじゃん。とりあえず使ってよ。」

「え、で、でも...」

「いいから。俺学校に用があるし予備の傘とかあるでしょ。...て、学校帰りだよね?借りればよかったのに...」

予備の、傘......!!!!

なんてことだ!普通あるよね。そうですよね!

「榎本さん、おもしろいね。明日から楽しみだよ。じゃ、また明日ね」

神尾くんはそう言って私の手に傘を握らせて走って行った。

「あ...お礼...」

なんだろう。変な気持ち。

ドキドキとなる心臓。

後半、彼の顔が見たいのに恥ずかしくて見れない。

そんな変な気持ち。

ーーーまた明日。

......ん!?また明日!?




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