敏腕社長に拾われました。


どうする? どうしたらいい? ここは正直に『胡桃ちゃんごめん。私、一文無しなの』と謝るべき?

胡桃ちゃんに手を引かれながらどうしようか考えていると、あっという間に社員食堂に到着してしまった。

「胡桃ちゃん、ごめんなさい」

ここはやっぱり謝るしかないと、まだ繋がれている胡桃ちゃんの手を引く。

「え? 智乃ちゃん、急にどうしたの?」

「あのね、実は私……。お金持ってなくて」

二十五にもなったいい大人が、お金持ってないなんて……。恥ずかしすぎて、穴があったら入りたい気分。

でもここで言わなくちゃ、きっともっと恥ずかしいことになるよね。

恥ずかしさから顔に火照りを感じながら、胡桃ちゃんの反応を待つ。

「そうなの? 智乃ちゃん、おさいふ持ってくるの忘れちゃったとか? でもここ、お金要らないし」

はぁ!? お金要らないって、どういうこと? まさかここの社員食堂は、全部タダなんて言わないよね?

胡桃ちゃんの言葉にポカンとしていると、胡桃ちゃんはおもむろに首にぶら下げている社員証を手に取った。

「智乃ちゃん、いい? これをこうやってピッとすると……」

う言って胡桃ちゃんは食券機に社員証をかざすと、次に親子丼と書かれたボタンを押した。



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