敏腕社長に拾われました。

社員食堂の窓際の席は、綺麗に手入れされている庭が望めて気持ちがいい。高級ホテルのラウンジで食事しているような、そんな錯覚まで起こしそうになってしまう。

まあ実際食べているのは、親子丼なんだけれど……。

一緒に付いていたお新香をパクリと食べ、味噌汁をすする。こんな時、あ~日本人でよかった!と思うのは私だけじゃないと思う。

安いのにかなりボリューミーな親子丼に満足しながら食べていると、不意に右肩を叩かれて振り向いた。

ぷすっ……。

右頬を何かで突かれ目線を上げると、満面の笑みを湛える虎之助……と、その後ろには永田さんが立っていた。

今どきほっぺをツンなんて誰がする? しかもここ、お昼時で満席状態の社員食堂なんですけど……。

私たちの回りにいる何人かの女性社員たちが社長の存在に気付き、ざわざわし始めた。

そりゃそうだよね。これだけのルックスだもん、目立つに決まってる。しかも一緒にいる永田さんも、最近流行りのメガネ男子でイケている。

でもまあふたりとも、性格には大いに難点ありだけど。見た目だけじゃその辺り、わからないからね。

せっかくの幸せな時間を害されてため息とともにジトッと虎之助を見ると、相変わらずのんきそうに笑っている。でもその後ろの永田さんは、かなりの呆れ顔。しかも目線で『お前がいると、必ず何か問題が起こるな』と訴えていた。エスパーじゃないけれど、私にはわかる。

私がいると問題が起きるんじゃなくて、虎之助が問題を起こしてるんでしょ! そこんとこ勘違いしないでもらえます?

そう言いたいのをグッと堪えると、未だ私の頬をムニムニ触っている虎之助の人差し指をそっと振り払らった。



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