敏腕社長に拾われました。

虎之助に背を向けて、残っている親子丼を口に運ぶ。

とその時、テーブルの上に置いてあったスマホがメール着信の音を鳴らした。

こんな時間に誰?と訝しげにスマホを手にすると、ディスプレイに表示されていたのは『浩輔』の二文字。その名前をじっと見つめていると、

「誰からメール?」

私の右肩後ろから、虎之助が覗きこんだ。

なぜだろう。私は虎之助に『浩輔』の名前を見られたくなくて咄嗟にスマホを隠すと、何事もなかったかのように親子丼を食べるのを再開する。

「おい、なんで無視するんだよ」

「無視なんてしていません。今のメールはよく行くお店からのお知らせだったので、言う必要がないと思いまして」

虎之助に、嘘をついてしまった。

嘘なんてつく必要がない。だって虎之助は浩輔のことを知っているんだから。なのに私の心は浩輔からメールが来たことを、虎之助にはどうしても知られたくないみたい。

それがどういうことなのか……。

「ふ~ん、まあいいや。俺、会議の後は取引先との会食に行くから」

虎之助の話すトーンが、少し冷たく感じるのは気のせい? 

自分で嘘をついておいて、虎之助のそっけない反応に少し胸が痛む。

「はい、わかりました」

じゃあ夕飯はいらない?

そう聞けたらいいのに……。

でも会議の後の会食なら夕飯はいらないよね。今晩は久しぶりに一緒だと思ってたのに、ちょっと残念。



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