敏腕社長に拾われました。

そう思った途端、親子丼の味が味気ないものになってしまう。虎之助はすぐ隣の席にいるというのに、今はその距離でさえ遠い。

何度も言っているように、私と虎之助はただの同居人。それ以上でもそれ以下でもない。

そんなこと分かっているのに、虎之助は何時に帰ってくるのかな?とか、今夜の夕食は何を作ってあげようかな?なんて考えている自分がいた。

ただの同居人が、相手の帰りをドキドキしててどうするの……。

自嘲気味に笑みを浮かべていると、虎之助の気配を感じてその笑みを消した。

「今日はまっすぐ家に帰れよ、いいな?」

耳元で囁かれた言葉に、首を傾げる。

それって、どういう意味?

仕事が終われば、まっすぐ家に帰るに決まってるじゃない。今の私には、途中でどこかに寄るとか友だちに会うとか、そんな余裕ないもん。

そんなこと虎之助もわかってるはずなのに、変なの。

それでも一応、虎之助のことを見て小さく頷くと、彼は安心したような顔をした。

たった四歳しか違わないのに、子供扱いですか?

恋をしちゃうとなりふり構わず突っ走り、気づいたら捨てられる私は、虎之助からみたら子供なのかもしれないけれど……。

なにげにスーツのポケットに手を入れると、スマホが指に当たる。

そう言えば、浩輔からメール来てたんだ。今さら捨てた女にメールなんて、浩輔も何を考えているんだか。



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