敏腕社長に拾われました。

「は、はい……」

なんだ、今の声。あれは脅し?だよね。マジでちょっとビビったもん。

確かに下ろされたら、逃げられる?とか思ったけれど。そんなの全部お見通しってわけ?

言うとおりにするのはすっごく癪だけど、ここは黙っておとなしく座ってるほうが無難みたい。

でも運転席に乗り込んだ彼は、私に向ってゆっくり左腕を伸ばし始める。

な、なに!? 殺される? やっぱりこの人、悪い人だったの?

万事休す。もうダメだと固く目を瞑ると、頭の上にポンッと手の感触。

「え?」

パチッと目を開け横を見ると、笑顔の彼がいた。

「よくできました~」

「ど、どういうことですか?」

「逃げないでねって言ったの、ちゃんと守ったからね」

「逃げるなよって、低音ボイスで脅されましたから」

「ヒドいなぁ~キミは。俺、脅してなんかいないよ。何? 何かされちゃうとでも思った?」

彼はそう言うとククッと意味深な笑いを見せてから、車を走らせた。

なんだ、コイツ。羊の皮を被った悪魔か?

表情や声は優しいのに、言ってる内容が全部うそ臭い。それともこれは今流行の、“ツンデレ”ってやつなのか?

なんにしてもこの男、相当胡散臭い。



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