敏腕社長に拾われました。
○虎穴に入らずんば虎之助を得ず

どこかにコイツの情報はないかと、目だけをくるくる動かして車内を物色。

車にはそんなに詳しくないけれど、この車が日本メーカーの高級車だということは知っている。確か有名芸能人がCMに出てたっけ。

しかもシートは革張り、内装も高級仕様でオーディオも高そうだ。

少しだけ顔を動かして、今度は彼をチラ見。

どこかはわからないけれど、有名ブランドのスーツに身を包み。髪は茶髪までいかないにしても明るく染めていて、無造作に毛先を遊ばせているところはなかなかいい感じ。

そしてふわっと漂ってくるのは、香水の香り? グリーンシトラス系の爽やかなのに甘い香りが、匂いフェチの私にはたまらない。

これってもしかして、お金持ちの香りだったりする?

「あんまり見ないでくれる? それとも何、俺に惚れちゃったとか?」

「惚れないし」

パッと顔を窓の方に向けると、大きく息を吐く。

ずっと見てたの、バレてたのね。ならもっと早くに言えばいいのに、知らん顔で十分見させておいて、ここにきて『見ないで』なんて。



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