敏腕社長に拾われました。
高城常務が“結婚”の二文字を口にした時は驚いたけれど、まさかその相手が詩織さんだったなんて……。
驚きすぎて、うまく状況が飲み込めない。
これって虎之助が言っていた、『既成事実』作戦が失敗したっていうこと? いや失敗したんじゃなくて、その『既成事実』作戦を永田さんに横取りされたみたい。
虎之助を見ればいつになく怒った顔をしていて、永田さんのことを睨んでいるようにも見える。
本来なら虎之助と私、ふたり揃ったこの場所で、私のことを婚約者だと紹介するつもりだったに違いない。そこへ永田さんが詩織さんを連れてきてしまったから、ことがややこしくなってしまった。
「ちょっと雲行きが怪しくなってきたわね」
私の耳元で、宮口さんが小さく呟く。
確かに宮口さんが言う通りで。虎之助の目論見は、永田さんによってまんまと外されてしまった。いくら虎之助が永田さんのことを信頼していても、このことに関しては虎之助も納得してない。何度も断っているのに詩織さんを連れて来られてしまっては、さすがの虎之助でも今この場でどうすることもできないだろう。
一方、詩織さんは……。
永田さんから何も聞いてないのか、私を見て小さく会釈をすると虎之助の横に寄り添った。ふたりが並んだ姿が“美男美女”そのもので、負けないって決めたのにもうすでに心がポキッと折れそう。