敏腕社長に拾われました。

それにしても詩織さん、やっぱり綺麗。今までは写真しか見たことなかったけれど、生詩織さんのほうが何倍も美しい。

『詩織さんが会社に来ては、私たちをこき使う』なんて宮口さんは言っていたけれど、今目の前にいる詩織さんからは、そんな偉そうな感じは全く受けない。

虎之助の前だから? それとも、宮口さんの勘違い?

どちらにしろ虎之助の隣で様になるのは、誰が見たって詩織さんに間違いない。それに仕事上でも、詩織さんなら虎之助にプラス要素を与えられる。永田さんじゃなくても、虎之助のパートナーには詩織さんのほうが合っていると誰もが思うだろう。

そんなこと分かっていたことなのに。それでもふたりの姿を目の当たりにしてしまうと、負けそうな自分が顔を出す。

「すみません、ちょっとお手洗いに」

「早瀬、どうした? 顔色が良くないけど、具合でも悪いか?」

虎之助が早瀬と呼んだことに多少の違和感を感じながらも、笑顔を向ける。

「いえ、大丈夫です」

ここで逃げたしたら、永田さんの思うつぼ。虎之助の結婚相手は詩織さんの方向に話が進んでしまうと分かっていても、今の私には虎之助の隣に並ぶ自信がない。

「早瀬さん、私も一緒に行くわ」

きっと私の胸の内を読み取ったのだろう。宮口さんが、心配そうな顔を見せた。

「ひとりで、行ってきます」

宮口さんの気持ちはありがたいけれど、今は一人になりたい……。

ぎこちない笑顔を作り小さく頭を下げると、足早に会場を出た。



< 193 / 248 >

この作品をシェア

pagetop