敏腕社長に拾われました。
と、いつの間にそばに来ていたのか、虎之助が私の腕を掴んだ。
「だから、誰も貸さないとは言ってないでしょ。とにかく、もう一度座って」
そう言って連れて行かれたのはさっきと同じソファーだけど、何故か隣には虎之助がいて。逃さないつもりなのか、手はがっちり繋がれている。
「なんのつもりですか?」
繋がれた手を持ち上げて、それをアピール。
「別に意味は無いけど。この方が、仲良く話ができると思ってさ」
なんてニコッと笑って言うもんだから、なんかもうどうでも良くなってしまった。
何を考えてるのか全く分からない人だけど、たぶん悪い人ではなさそうだ。お金も貸してくれる?かどうか分からないけれど、もう一度話をしてみるのも悪くない。
「で、さっきの話の続きだけど」
虎之助は手を繋いだまま私の方を向くと、その顔を少しだけ真剣なものに変えた。
「はい」
「俺、まだキミのこと何にも知らないんだよね。名前も歳も、な~んにも」
「あ!」
そうだった。虎之助に名前を聞いて、自分も名乗ったつもりでいた。
あ~なんという失態。自己紹介もせず『お金を貸してください』なんて、とんでもない話だ。