敏腕社長に拾われました。
勝手なことを言ってるのは分かってる。分かってるけど、ここはどうかお願い! いい返事が返ってきますように……。
両手を握り合わせ、祈るように目を瞑る。
でも虎之助から帰ってきた言葉は……。
「ダメ」
だよね。それが当たり前の答えと言うもので、言い返す言葉もなにも無い。
目をゆっくりと開け、足元のボストンバッグ掴む。
「なんか勝手なこと言って、すみませんでした。ジュース、ありがとうございます」
言葉少なめにペコリと頭を下げ虎之助の顔も見ずに立ち上がると、部屋を出ようと足を一歩踏み出した。
「どこ行くつもり? まだ話は終わってないよ」
虎之助のちょっと呆れた声に、足を止める。
「いえ、私は終わりましたので」
もう話すことは何もない、だったら長居は無用というもの。さっさとここを出て、次のことを考えなくちゃ。
次のことを考えると言ったって、なんのアテもないけれど。友達の澄子のところに行くこともできるけど、最近彼氏と同居し始めたばかりだし、なんとなく行きにくい。
はあ~とため息をつきズンと重くなった体を引きずるように、また一歩踏み出した。