敏腕社長に拾われました。
「スゴい……」
山梨県にある詩織さんのワイナリーに到着すると、ヨーロッパ調の外観にしばし言葉を奪われる。
やり手の女社長とは聞いていたけれど、ここまで立派なワイナリーだったなんて。
タクシーから降りるまでは揺るぐことがなかった強い気持ちが、一瞬で崩れそうになる。
「ダメダメ」
私はここへ、何しに来たの? まだ入り口の前にも立ってないのに、そんな弱腰でどうするの?
自分にそう発破を掛けると、バッグを持つ手に力を込める。
そしてワイナリーの入り口受付付近に着くと、ハタとあることに気づいて足を止めた。
宮口さんに今日行って来いと言われて来たのはいいけれど、あの忙しい詩織さんが今ここにいるのかしら? 今日は土曜日だけど、彼女には休みなんて無いに等しい。虎之助もそうだから、そのあたりのことはよく分かっているはずなのに。
私ったら……。
自分のバカさかげんにガックリ項垂れると、「あのぉ?」という女性の声に顔を上げた。
すると、ここのワイナリーに勤める人なのか、綺麗な葡萄色(えびいろ)のクラッシックなユニホームを着た可愛らしい女性が笑顔で立っている。