敏腕社長に拾われました。

「ふふ……」
その時どこからかちょっと気味の悪い笑い声が聞こえてきて、意識のないはずの虎之助の体が震えだす。

え? どういうこと?

虎之助の体から離れると、なにが起こったのかわからない私は呆然とその場に立ち尽くす。

「ぶぶっ……あはははははっ!」

なおも虎之助の体の震えは大きくなっていき、最後にはお腹を抱えて笑い始めた。

「智乃、最高。『ねえ、返事してよ、虎之助!』だって。俺が死んじゃったとでも思った? 智乃って可愛いよね」

そう言って私の目の前で涙を流し大笑いしている虎之助を見て、私の中の何かがプツンと切れる音がした。と同時に私の右手が振り上げられると、虎之助に向ってまっすぐ振り下ろされる。

部屋中にピシャリと乾いた音が響き渡る。

それは私が虎之助の頬を、目一杯の力で平手打ちをした音で。虎之助は私に平手打ちをされるとは思ってもいなかったようで、あっけにとられている。

「……虎之助なんて大嫌い」

小さな声で呟くようにそう言い放つと、黙って部屋を出た。

人間って怒りを通り越すと、案外冷静でいられるものなんだ。

でも信じられない、虎之助ってあんな人だったんだ。人を騙して大笑いするなんて最低。

悔しくて悲しくて。冷静を装っていたつもりが、目からは次から次へと涙が溢れ出てきて。それを腕で拭い取ると、洗面所に駆け込んだ。



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