冷徹なカレは溺甘オオカミ
ガーッと目の前のエレベーターが開いた音にハッとして、わたしは顔をあげる。

いかんいかん、昔のこととか思い出してトリップしてた。

なんかアラサーになったあたりから、どんどん妄想が激しくなってる気がするんだよな……気をつけよう……。


先に乗って【開】ボタンを押してくれている人に会釈しながら、自分もエレベーターに乗り込む。

途中何度かエレベーターは止まりつつ、そしてわたしがぼんやりと階数表示を見上げている間に、オフィスがあるフロアへとたどり着いた。

このビルは地下2階地上17階の建物で、その中の11階にわたしの勤める会社はある。

もう自分の他に2名しか乗っていない箱型の乗り物から、わたしは足を踏み出した。




「ふう……」



小さく息をつく。

さて、今日も仕事がんばろ──。




「柴咲さん」

「ひゃうっ!」



唐突に背後から声をかけられて、思わずびくっと肩をはねさせた。

び、びっくりした……!! ていうか今の場面は、クール系美人なら「きゃっ」か無言のところだったよね?!

なんだよ「ひゃうっ」って……!! 失敗したよこんちくしょう!!


一瞬のうちにそう考えてから、くるっと背後を振り返る。

そこにいたのは見慣れた顔で、わたしは目をまたたかせた。
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