冷徹なカレは溺甘オオカミ
「柴咲さん、どうしたんですか?! 何かされたんですか?!」

「な……なんで、印南くんが、ここに……」



めずらしく取り乱した様子の彼に気圧されながら、なんとかつぶやく。

眉間にしわを寄せた彼は、それでもハッキリと言い切った。



「柴咲さんを狙うストーカーから守るために、柴咲さんをストーカーしてました」

「……は?」



一瞬、恐怖心を忘れて、素で聞き返してしまった。

そんなわたしに構わず、印南くんが周囲を見回す。

床に転がったバラを見つけて、その瞳がすっと細められた。



「……赤いバラ。今夜は、ここに落ちてたんですか?」

「……あ、」



見つけたときの衝撃を思い出して、肩をすくめる。

それに気がついた彼が、左手をわたしの肩に添えたまま、もう一方の手でやさしく背中を撫でてくれた。

そのあたたかさに、少しだけ、呼吸がしやすくなる。

わたしは泣きそうになりながら、小さくうなずいた。



「そ、う……あ、あと、鍵も……」

「鍵?」



顔を上げた彼の視線が、ドアについている鍵穴で止まる。

生々しいピッキングの痕跡に眉をひそめ、わたしの肩に触れる手に、さらに力を込めた。



「柴咲さん。まず、警察に連絡しましょう。これはもう、間違いようもなく犯罪です」

「う、うん……」
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