冷徹なカレは溺甘オオカミ
ぼっと、頬に熱が灯った。

そんなわたしを満足げに流し見て、彼は再び前を向く。



「というわけで、とりあえず今は、そんなかわいい俺の彼女が誕生日プレゼントに望むものを聞き出したいところなんですけど」



なにか欲しいものはありますか?と、続けて大智くんは訊ねてきた。

……欲しいもの。わたしが、望むもの。

冷たい空気の中、ぬくもりを分け合いながら、今隣りにいてくれるひと。



「──じゃあ、」



見上げて、少し照れくさくなりながら、わたしは笑みを浮かべた。



「じゃあ、印南 大智くん。ずっと、わたしのそばにいてください」



一瞬、拍子抜けしたように目をまたたかせた彼。

だけどすぐに、小さく微笑んだ。



「……仰せのままに。柊華さん」





はじまりは、なんの強制力もない業務命令。

けれども、わたしは恋に落ちた。彼いわく、それは呪い。だけどわたしにとっては、抗えない甘い魔法。

解けることのないその魔法は、きっとずっと、これからもわたしの胸を高鳴らせ続ける。










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