冷徹なカレは溺甘オオカミ



テーブルの上には、ほかほか湯気をたてているナシゴレン。

お店顔負けのプレートランチを前に、わたしはお行儀よく両手を合わせた。



「いただきまーす」

「はいはい、めしあがれー!」



キッチンの方からにこにこ笑顔を覗かせてそう言ったのは、わたしの姉で今年31歳になる柴咲 瑛奈(えいな)だ。

チリソースのいい香りがただようごはんをスプーンですくい、ぱくりと口に入れる。



「うん、おいしい!」

「ほんと? よかったあ」



ストレートなわたしの褒め言葉に、ふにゃりと破顔するお姉ちゃん。

テーブルの中央にウーロン茶のピッチャーを置きながら、今度はわたしの向かい側にいる人物へと視線を向ける。



「颯真(そうま)くんはどう?」

「ん、ウマイよ。店で出ててもおかしくない」



柴咲家の長男、5歳年下で今は大学院生の颯真も、咀嚼しつつこくりとうなずいた。

彼の反応に「やったあ」とまた笑って、鼻歌をうたいながらお姉ちゃんもテーブルにつく。


日曜日。わたしは弟ともにお呼ばれして、彼女の手料理を堪能していた。

料理好きなお姉ちゃんはよく自宅にわたしたちを呼んで、腕によりをかけたおいしい料理をふるまってくれるのだ。

いつもだったら、この家に同棲している彼氏の托人(たくと)さんも、一緒にテーブルを囲む。だけどどうやら彼は急用で家を空けているようで、めずらしく姉弟水入らずの食事だ。

まあ、さみしがりやなお姉ちゃんのことだから……今日急きょ彼に用事ができたことがさみしくて、だからこそ今朝になってから突然【今日ウチでランチしない??】なんてメールを送ってきたのだろうけど。
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