冷徹なカレは溺甘オオカミ
「なー、柊華ってまだ、彼氏のひとりもできてないわけ?」



食後のデザートを口に運びながら、何の遠慮もなく颯真が訊ねてくる。

わたしはお姉ちゃんお手製焼きプリンを変なタイミングで飲み込んでしまい、盛大にむせた。



「ごほっ、げほっ」

「わわっ、柊華ちゃん大丈夫ー?! もう颯真くんってば、少しは相手に気を遣った言い方できないの?!」

「自分の姉に気ぃ遣う必要ねーだろ」



もともとたれ目で柔和な顔立ちのお姉ちゃんがさらに心配そうに眉を下げて、わたしの背中をさすってくれる。

対照的につり目でシャープな印象の顔立ちをしている颯真は、呆れた表情でスプーンをこちらに向けてきた。



「つーかさ、真面目な話、マジでどーすんの柊華。そろそろ三十路だろ? 結婚だってしたいだろ? それなのにいまだバージンって、残念すぎんだろ」

「………」



颯真の手によってぷらぷらと上下するスプーンを横目に、無言でウーロン茶のグラスに口をつける。

そんなわたしに何か思ったのか、お姉ちゃんがやさしく両肩に手を乗せてきた。



「大丈夫だよぉ、柊華ちゃん。いつか絶対、素敵な彼氏ができるから!」

「つってもなー、柊華って初恋もまだなんだろ? その歳ですきな人もできたことないって、処女以前の問題でいよいよ本格的にやべーよ」

「ちょっとちょっと、颯真くーん!!?」
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