ハッピーアワーは恋する時間
「よし。じゃあもう切るぞ。戸締り確認しろよ」
「はぁい、刑事さん!」

おどけた口調で返事をすると、クスクス笑う亜幸さんの声が、スマホから聞こえてきた。

「明日また電話かメールする」
「・・・うん」
「俺に電話やメールしたくなったらいつでもいい、かけていいぞ」
「それは・・・・・・はぃ」
「おやすみ、未散」
「亜幸さん・・おやすみなさい」

・・・確かに私は、「今の亜幸さんに出会えて良かった」と思ってる。
でもあのとき・・・「今の亜幸さんが好きです」って、言いそうになっていた。

私は「うわーっ!」と叫びながら、ベッドへダイブした。

「どう考えてもダメでしょう、それは!もうこれ以上は・・・ダメだよね、うん。だから亜幸さんへ電話やメールは、絶対しない!しませんよ!そうそう、だって仕事の邪魔をしたくない・・・まぁ、仕事中だったら電話には出ないだろうけど。それに、ひとりでいる時とか、友だちと一緒にいるひとときの邪魔をしたくないし」

亜幸さんへ電話やメールをしない正当な理由・・・別名“言い訳”は、次々に思い浮かぶ。
でも、私の周りに張り巡らしている、「もう恋はしない」という誓いの分厚いバリアに、亜幸さんの“押し”で、少しずつヒビが入ってきているような・・・そんな気がした。
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