この恋心に嘘をつく
「アイツは――! いない、か……」
もう完全に、見失ってしまった。
この状況で見つけるのは、困難だろう。
「――怪我は?」
「……大丈夫です。ご迷惑をおかけしました。車の方は、無事ですか? もし傷とか……っ」
チラッと、男性の後ろに視線を移し絶句した。
素人目にもわかる。
あれは、高級車だ。
もし傷とかついてたら、弁償を――なんて気軽に言える代物じゃない。
「えっと……」
どうしよう。
ただ万引き犯を追いかけて来ただけなのに、こんな状況に陥るとは。
「いいですよ、気にしなくて。傷なんてついてませんから」
「ほ、本当ですか!?」
良かった、いい人で。
ホッと安堵の息をつく。