ワケあり彼女に愛のキスを
「……猫かよ」
ゴミ捨て場の金網で出来たドアに飛びかかりそれを開けようとしている猫の姿だった。
猫が飛びかかる度にガシャン、と、体当たりされた金網が音を立てる。
それを何度か眺めてから、バカバカしいと優悟がため息を落としながら立ち上がった。
「どうせ、何度かああやってるうちにドアが開いて、猫が漁ったんだろ。うちのゴミだけだったのはただのたまたまだ」
「……そうだね」
舞衣が立ち上がると、優悟は鍵を舞衣に手渡してから歩き出す。
「一応、管理人に行っておく。猫が荒らせるようじゃマズイだろうし、簡単な対策ならすぐできるだろうから。おまえは先部屋戻っとけ」
「あ、うん。じゃあご飯の準備してるね」
歩きながら「おー」と軽く手を上げた優悟を見てから、舞衣がエレベーターホールに向かう。
今日の夕飯は、昨日の残りのビーフシチューとパン、それにサラダだ。
準備と言っても、ビーフシチューを温め直して野菜を切るくらいだしすぐに食べられるかなと思いながら、舞衣がエレベーターのボタンを押そうとして……ハッとし振り返る。
なんだか視線を感じた気がして。
先週あたりから何かおかしな感じはしながらも、何度振り返ってもそこに誰かがいるだとかそういう事はなかった。
けれど、今日は違っていて……。
振り向いた先にいたひとりの女に、舞衣がビクッと肩を揺らし驚きながらその姿を見つめる。
ブラウスに膝丈のスカートといった、一般的な社会人の格好に、胸元まである長さの茶色いストレートの髪。メイクは少しきつく見えた。
キリッとした吊り上がり気味の大きな瞳が舞衣を睨むようにして見ていた。