ワケあり彼女に愛のキスを
「俺、おまえの事知らないんだけど……誰?」
「……え、知らないの?」
そう聞いたのは、女ではなく舞衣だった。
当然、こうして優悟強奪にきたのだから何かしら関係はあるのだと……もっと言えば、一度身体の関係を持った相手だと思っていただけに、驚き聞き返すと、優悟はもう一度女に視線を移した後、首を傾げる。
「いや、覚えがない。……悪いけど、どこで会った?」
どうやら本当に覚えがないらしい優悟に、聞かれた女は、ショックを受けたのか少し戸惑った様子だったが、そのうちににこりと微笑み答える。
その声にはもう、舞衣に対して手を振り上げた時のような怒りは感じられなかったが……優悟を見る瞳や微笑みに、その時感じたモノとは違う怖さを感じた。
「忘れたフリなんてやめてください。以前、このマンションの前で酔っ払いのおじさんに絡まれてた時に、北川さんが助けてくれて、そこから始まったんじゃないですか」
説明を始めた女がふふっと笑うと、優悟はそんな女に眉を寄せながらも「酔っ払い……?」と呟き……それから「あー」と思い出したように声を上げた。
確かにそんな事はあった気がするが……こんなメイクの濃い女だったか?と少し引っかかりながら優悟が言う。
「あったかもな。イライラして帰ってきたらマンション前でうるせーのがいたから睨んで退かした事が。でも……そん時助けただけなら、なんで俺の名前知ってる?」
もっともな問いに、女は微笑んだまま「あの後、どの部屋に明かりがつくのがを見て……それで、あとから部屋の前まで言って名前を見たんです」と発言する。
その答えに。
優悟と舞衣が、あ、これはストーカーだ……と背筋にザワッと寒気を走らせる。
さっきから女の笑顔や発言にどうも得体の知れない怖さを感じると思ってたけれど、これだったのかと。
背筋を凍らせながらふたりが黙っていると、笑顔を浮かべた女が続ける。