ワケあり彼女に愛のキスを
ほとんど身に覚えがないにも関わらず、こんな風にすぐに謝罪したのは女がなんだかヤバそうだからに他ならない。
何をどうとって勘違いしたのかは知らないが、女の中で事実が捻じ曲げられかなり話が盛られている。話というより、ご都合主義の妄想がたっぷりと盛られていると言った方が正しい。
「勘違いなんてそんな……あの時、北川さんがそのままでいいって言ってくれてすごく嬉しかったんです。私、見た目も地味で自信もなかったから……でも、北川さんがそう言ってくれたから満たされて……今はすごく幸せなんです」
口元に笑みを浮かべ恍惚とした表情で見つめてくる女に、優悟が顔を引きつらせる。
話が通じない事には苛立ちを通りこし恐怖を感じていて、こんな事は初めてだった。
しかも女相手に……とも思うのだが、それでもダメなものはダメだった。怖いものは怖い。理解できない思考を持っている相手は怖い。
そういえば舞衣に対しても最初そんな事を思った気がしたが……これに比べたら随分可愛いもんだったと優悟が思う。
とりあえず、一ヶ月ほどストーカー行為はされていたようだし、もうこれは通報で警察に任せればいいんじゃないかという考えもよぎり始めていた時、隣に立つ舞衣がトンッと軽く肘打ちした。
視線を向ければ、どうにかしろというようなしかめっ面を向けられる。
その頬は赤く腫れていて……それを思い出すと同時に、理解できない女相手に、さきほどまでは感じようがなかった苛立ちがムクリと顔を覗かせた。
そういえばさっき。随分大きなアクションで叩かれそうになっていたのに、舞衣はよける仕草を見せなかった。あれは……なんでだったんだろう。
そんな事を思い見ていると、催促するようにもう一度肘打ちが入ったため、分かったよとばかりに眉を潜めてから女に視線を戻した。