夏祭り

2

歩き出すと、私の隣は自然と唯斗になる。奈那と玲央は、高2の時から付き合っている。だから、私と唯斗は、いつも隣になる。

「それにしても、本当に久しぶりだな、瑛美。」

「そうだね。私だけ、大学違うしね。」

「半年見ないうちに、随分大人っぽくなったんじゃない?」

「そう?ありがとう。」

「ん。どういたしまして。」

私がお礼を言うと、唯斗はにこりとした。

あぁ、私は、ずっとこの笑顔が好きだった。どこか幼さの残る、この笑顔が。

「ねぇ、別行動してもいい?」

前を歩いていた奈那から声が掛かる。
私と唯斗は目を合わせる。

「私はいいよ。」

「俺も。」

「ありがとう!ほら、玲央!行こう!」

奈那は玲央の手を引っ張り、人混みの中に消えていった。

「俺たちも行くか?」

「そうだね。行こう?」

2人で肩を並べて歩き出す。

好きな人とこんなふうにして歩けるなんて、すごい幸せなことなのはわかってる。でも、もしも、“友達”という関係じゃなくて、“恋人”っていう関係だったらな…って。そうしたら、奈那たちのように、手を繋いで、歩けるのかなって。

「瑛美?」

唯斗に声をかけられ顔を上げると、私たちの間が離れていた。どうやら、考え事をしているうちに、足が止まってしまっていたらしい。

「大丈夫か?」

唯斗は私のところまで引き返して来て、心配そうに尋ねてきた。

「ごめん、考え事してた。大丈夫だよ!」

「そっか。人多いんだから、迷子になるなよ?」

「大丈夫だって!子供じゃないんだから。」

「心配だから、手、貸して?」

「ん?なんで手?」

不思議に思いながらも手を差し出すと、そこに唯斗の手が重なり、きゅっと握られる。

「ゆ、唯斗?」

自分の顔が紅くなっているのがわかる…。

「こうすれば、迷子にならないだろ?」

「…なんかムカつく…。」

私だけ意識しているみたいに唯斗が余裕な感じだから、ちょっとムカつく。
それでも、嬉しいと感じてしまうのは、この気持ちのせいなんだろうな…
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