いつだって僕らは
「柚維!数学マジつまんなかったよねぇ」

授業が終わっても、教室内を立ち歩く事なく自分の席に座ってぼーっとしていたあたしに、学級委員の梓が話しかけてきた。
梓は、先生の前では真面目でおとなしい、素敵な生徒を演じきっている凄い人。きっと内申はとても良いだろう。

だが、陰では数学のT先生はキモイ、美術の先生はウザイ等とよく悪口を言ってたりする。これだから女子は怖い等と言われるのだ。
「ああ、つまんなかったよね」

あたしは適当に答える。はっきり言って話を聞いてなかったのでつまらなかったかどうかはよく分からない。つまらなかったから話を聞いてなかったのかもしれないけど。

「柚維さ、藤谷君とずっとしゃべってたでしょ」

梓はそう言いながらセミロングの髪をかきあげた。
なんて偉そうな態度だろうと思ってしまった自分がいた。

「うん、話してた」

「何の話してたのー?梓、気になるなぁ」

そんなの藤谷から聞いてほしい・・・大部分藤谷の一方的なしゃべりだったんだから。

「うーん、文通の話とかかな」

あたしはペンを回せないのにいじりながら言った。あきらかに相手に喧嘩を売ってるようなものだ。

「文通!?素敵・・・」

梓は文通のどこに惹かれているのだろうか。さっき髪をかきあげたから髪の毛がボサボサになってる事に本人は気付かないのだろうか。

「そ、そう?」

「素敵よ・・・だって藤谷君が文通してるんでしょう?藤谷君がしている事は全て素敵なのよ」

その考えはどこから出てくるの!?
説明し忘れたけど、梓は藤谷に惚れているらしい。なんでだろう。
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