恋、物語り
私にしたように、彼女にもしたの?
同じその唇で…。
「…ひどい、ひどいよ…」
「ごめん、アヤ。ごめん……」
「私のこと、好きって言ってたじゃん」
「好きだよ!…大好きだよ」
力強く言ったあと、小さな消えるような声で続けた“好き”の言葉。
でも、もうーー…
「小林くんはそんなことしないって、思ってた」
なのに、どうして?
どうして?どうして?どうして?………
虚しく響くだけの私の言葉。
彼は黙ったまま俯いていた。
そしてゆっくり口を開く。
「ごめん…。アヤ。
……別れたくなった?」
別れたく……
そんなことは考えてもいなかった。
ただ、彼の近くにいることが私の幸せだった。
この8ヶ月、彼にはたくさん愛情をもらった。
そして、私も彼が好き。
それは完璧でーー…
不安なんて何もなかった。
このまま順調に、進んでいくものだと思っていた。
なのに、こんな…
たった一つの過ちで終わってしまうの?
「……っ
別れ…たくないよぉ…」
涙が頬を伝うのを止められる術を私は知らない。
彼は優しく、私の涙を拭いた。
「俺だって別れたくないよ」
そう彼が言うから、
私は心にある不安を取り除きたかった。