恋、物語り
約束通り、近くのイオンに入ってるマクドナルドでハンバーガーを買って彼の家に帰った。
彼の家はいつ来ても大きくて、いつ来ても綺麗。
買ったばかりだというのに、もう冷めてしまったポテトを口に頬張るけれど、食欲はなかった。
一口食べて彼に「私の食べる?」と聞いたら「珍しいね、いつもなら頂戴って言ってもダメって言うのに」そう悪戯っぽく笑う。
ーー…胸が苦しくて、食べられなかった。
「アヤ、ユウコのこの気にしてる?」
「………」
見透かされていた。
黙る私に彼は続けた。
「ユウコから告白されただけ。
でも、俺にはアヤがいるし、断ったよ。
不安にならないで」
そう言って私の手を握る。
でも、不安は拭えなかった。
ユウコの「キスして」という言葉が頭から離れない。
「…キスしてた」
見てない。せがまれてるところを見ただけ。
少しかまをかけただけ。ただ、それだけだった。
「………」
なのに、どうして…?
ーー…『してないって』
ーー…『なに言ってんの。断ったよ』
きっと彼は呆れたように笑ってこう言うはずだった。
なのに、いくら待っても期待していた言葉が出てこない。
「…小林くん……?」
「ごめん!…ごめん、あの……」
彼の口から言い訳は出てこなくて、ひたすら「ごめん」と、謝っていた。
「どうしてよ…」
初めての、キスを思い出していた。
理性飛びそうと言った彼に、飛んでいいと告げた私。
幾度となくキスはしたけれど、あの日が私の最高のキスだった。