恋、物語り




「付き合っちゃえばいいのに」
お昼休み時間、屋上でお弁当を広げていると
ナツキが唐突に言ったから
私は飲んでいた水をこぼしそうになった。


「な!な…なんで!?
だって…好きかどうかなんてよくわからないし」

「だーかーらー、
アヤは頭で考えすぎなんだよ!
コバからメールが来たら嬉しい。
ドキドキする。
これだけで十分突っ走れるでしょ」


朝、ミツルにも言われた言葉が
つらつらとナツキの口から流れる。


「でも、ね。
朝言われたユウコ…ちゃん?みたいに
泣くほど好きとか思えないし…」

あー、もう!
と、ナツキは長い髪をポリポリ掻いて
ため息をついた。


「そういうことじゃないでしょ。
今、ユウコの気持ちなんて関係ない。
アヤがどうしたいか。でしょ?」

私がどうしたいか。
頭が混乱する。
小林くんを好きか聞かれたら
ブレーキがかかってしまう。

あの子みたいに「好きなのに!」と叫ぶ勇気もない。

付き合うって何をするの?
好きになる時ってどんな時?
ドキドキしたら好きの証拠?

恋愛初心者の私には答えが出ない。


「ごめん。
ゆっくり考えなって言ったの私なのに」
と、ナツキは持っていた箸をおいて
私に頭を下げた。


「ううん。私も優柔不断だから…」

出てきた言葉はほんとありきたりで。
心配したり、応援してくれるナツキに
的確な返答が出来ない。
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