恋、物語り



「暑い!あつい、あつい!」
北海道の夏は過ごしやすいなんて、誰が言ったのだろう。
連日30度越えで蒸し暑い日中。
いや、夜も熱帯夜で寝心地が悪い。

「お母さん、暑いよー」
母に訴えたところで暑いのは変わりない。
しかし、口に出さなくてはやってられない。



「毎日、毎日暑いってゴロゴロして!
外にでも行ってきなさい!
きのこ生えるよ!」

確かに夏休みに入ってから外に出ていない気がする。
重たい体を持ち上げて、散歩でもしてこようか。
そう思った。



ブーブー、ブーブー
リビングにあるセンターテーブルの上で携帯が振動する。
「あ、メール」
独り言を呟いて携帯とペットボトルを手に自室に上がった。


メールの送り主は千夏だった。

[やっほー、アヤ!
毎年のようにきのこ生えてるんじゃない?笑
明日地元のお祭りあるよー。行く?
ミツルと行くんだけど、地元の子たち結構くるし、アヤも一緒に行こう!
あ、浴衣!わ、す、れ、ず、に!笑]


もうそんな時期か、とカレンダーを見る。
7月29日。毎年このくらいにあるお祭り。
去年も確か千夏たちと行った。
女子力上げるために
女子全員浴衣参加が条件だったらしいが
めんどくさくて着なかったら大批判をくらった。

去年のことを思い出して、ふっと笑った。


浴衣かぁ。そういえば姉のお下がりがあったはず。



リビングに降りて母に聞くと
「あら、今年は着るのね。用意しておくわ」
と言ってくれた。

久々に会う友達もいることだし
今年は女子力あげて行こう。


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