恋、物語り
上手く言葉を並べられるか心配だったけれど、上手く話そうとするから言葉が出てこない。
そう思って、今感じてることを言う。
「あのね……」
涙は出なかった。
私が泣くのは違う。ーー…そう思うから。
「私、小林くんとのメール、すごくドキドキした。
小林啓介って文字が表示されるとね
胸が弾んだし、、楽しかった。
好きって言ってくれて嬉しかった。
私も…好きになれたら…そう思ってたの」
うん…と、彼は情けなく相槌を打ち
静かに私を見ていた。
私は彼を見ることは出来なかったけれど…
「でも、ね。
小林くんを好きだって言った子がいて、その子は泣いてた。
私、あの子みたいに涙が出るほど…気持ちはないの」
彼の表情が曇るのが分かる。
「みんなにアヤは頭で考えすぎだよ。って言われてた。
私もそうなのかな?って…思ったし
これが恋なのかな?って思ったりした」
私は、彼を傷つけないで済む言葉が分からない。
「そんな時…
そんな時に、屋上で中島くんに会ったの。
私……あの…」
「中島を、好きになったの?」
「………」
見透かされている…そんな気分。
私は首を縦にふった。
「中島くんの雰囲気が好きだと思ったの。
彼の笑った時にあがる右の口角とか、
少し暗めの茶色い髪とか…
……一目惚れなんてしたことなかった。
でも、一目惚れだった」