恋、物語り




じゃあね。また学校で。
そう言うと2人は腕を組んで歩いていった。
少し、胸が痛かった。
けれど、思ってほどではない。


それより…
小林くん、ユウコと並んで歩いてないよね?

そんな感情が頭を巡る。



ナツキのところに戻ると「遅いよー」とナツキが駆けつけてきた。
謝罪し、ふと見るとみんな片付けを始めていた。


「私、これかれ彼氏ん家行くから。
アヤはシンさんとどっか行く?」

ナツキはいつも突然だ。
いつもなら怒るところだが、今日はホッと胸を撫で下ろした。


「ううん。帰る」
シンさんも「俺も眠たいし、帰るわ」そう言って目を擦っていた。


ナツキは彼氏の車に乗って去って行った。
大学生ともなると車も持っているのか。そう思ったけれど、シンさんが親の車だよと教えてくれた。


「……あ、じゃあ。」
そう言って駅に向かおうとしたが、車が無いためシンさんも電車で帰ると言って隣に並んだ。


でもーー…

「シンさん、あの…
私の彼が他の女の子と歩いてるの想像したらすごく嫌なんです。
同じことしたくないので、別々に帰りますね」

頭を下げて別のルートから駅に向かおうとした。
シンさんはふっと笑って「嫉妬?可愛いね」と私の頭を撫でた。
そしてバイバイと駅に向かった。


撫でられた頭を触る。

ーー…『嫉妬?可愛いね』


嫉妬…
始めての感情が胸を締め付ける。


小林くんがユウコと並んで歩く姿を想像する。
きっと、彼は優しく笑うだろう。
あの屈託のない笑顔をユウコにも向けるだろう。

ザワザワする。
胸がすごく痛かった。


これが嫉妬と言うのか。
それすら始めてのことでわからなかった。



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