痛々しくて痛い
翌朝、狙っていた時間に出勤すると、部屋の中は無人だった。


ちょっと来るのが早過ぎたかな…。


そんな風に考えながら自分のデスクへと近付き、トートバッグを昨日と同じように引き出しに仕舞ったり、パソコンを起動させたりしていると、部屋のドアがガチャリと開く。


「あれ?早いね」


条件反射で振り向くと、左手に電気ポット、右手にやかんを提げ、肩でドアを押すようにして入室して来る絹田さんの姿が目に飛び込んで来た。


「あ、おはようございます」

「おはよう。もしかして、電車の都合でこの時間になっちゃうとか?」

「いえ、本来ならもう一本遅い便なんですが…」


「よいしょ」と肘で押してドアを閉め、カウンターへと歩を進める絹田さんを目で追いつつ質問した。


「お掃除って、いつもどのタイミングでやってますか?」

「ん?」

「昨日帰り際にはやらなかったので、もしかしたら始業前にやるのかな、と思いまして」

「ああ、それで早く来た訳ね」


合点がいったようにハイハイ、と頷きながら絹田さんはポットとやかんをカウンター上に置いた。


「大丈夫だよ。社内の清掃は、社員が出勤する前にクリーンスタッフの人が終わらせてくれてるから」

「あ、そうなんですか?」

「うん。ゴミ集めは毎日で、それ以外…掃除機かけたり窓や棚を拭いたりなんだりは、数日おきにローテーションでね」
< 153 / 359 >

この作品をシェア

pagetop