痛々しくて痛い
それがたまたま彼の笑いの琴線に触れ、一度爆笑の渦に巻き込まれてしまったものだから、その後大して愉快な話などしていなくても、もう私と会話をしているというシチュエーションそのものが、条件反射的に、パブロフの犬状態で、おかしくておかしくて仕方なくなっているのではないのかな、と思う。


何て、精神科医ばりに麻宮君の真相心理を分析しながら、まだ誰もいない室内で茶器当番としての任務を遂行していると、渦中の彼がフラりと姿を現した。


「あ、おはようございます」

「はよー…」


そう挨拶を返しながら自分のデスクへと向かい、PCを立ち上げた後、麻宮君はふと振り返り、作業を終えてカウンター前から離れようとしていた私を凝視すると、そのまましばらく何やら考え込んでいた。


「あ、あの…?」

「そっか」


そして、合点がいったような表情になり、ポツリと呟く。


「綿貫を見てると何とも言えない郷愁が込み上げて来て、今までは地元が一緒でなおかつ高校のクラスメートだったからだと思ってたんだけど…」

「え?」

「間違いない。コロ太に似てるんだ」


麻宮君はキッパリと言い切った。


「こ、ころた?」

「そう。俺が小学生の時分から飼っている、実家の犬。近所の土手に棄てられてたのを拾って来たんだ」

「は、はぁ…」
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