痛々しくて痛い
「あくまでもウチは手芸用品の『小売業』で、販売戦略に長けた人材を求めてるからね」


当の店長は再びカップを手に取るとのんびりとした口調で言葉を繋いだ。


「作り手としてのスキルがなくてもさほど影響はないし、もし技術を身に付けたいなら入社後にいくらでも勉強できる機会はあるから「その点は心配御無用ですよ」っていう風に周知しているのよね」

「はい…」

「でも、やっぱり綿貫さんレベルの人が来たら採用せずにはいられなかったと思うわよ」


そこで店長はコーヒーを一口すすってから続けた。


「ただ机の上だけで勉強して取得して、その分野では達人になったような錯覚に陥って、いざ働き始めたら他の無資格の新人と大差なかったっていう類いの「資格」とは違って、正真正銘、即戦力になる「技術」だもの。反対に言えば、そんな人が何故真々田屋を選んだのかな?っていう疑問はあったけど。他にいくらでも選択肢はあったんじゃないのかしらって」

「い、いえ、そんな…」

ホント、どうして店長はこんな返事に困るような事ばかり言うのだろう。


内心冷や汗をかきながら返すべき言葉を考えた。


私が通っていた大学では、卒業後は中高の家庭科教諭になったりアパレルメーカーに就職する人が大半だったのだけれど、自分自身はその進路に大いに抵抗があった。
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