痛々しくて痛い
キャハハと下品な笑い声を上げたあと、星野は何かに思い当たったような表情になった。


「あっ。だから真々田屋に就職したんじゃない?他に何のとりえもないアイツにとって、唯一の特技を活かせる場所だもん」

「そうかもね」


その部分には別に興味がないようで、白けた表情でそう気のない返事をしてから吉田は続けた。


「そんでさ、家庭科の最後の課題って編み物だったじゃん。先生が持ってきたカタログの中から自由に選んでさ。私ああいう地味な作業って超苦手で、一番簡単なデザインのマフラー選んだんだけど、案の定全然進まなくってさー」


更に呂律がおかしくなって来た吉田はその原因物質であろうワインをグビッとあおり、喉を湿らせてから話を再開した。


「家に持ち帰って良いか先生に聞いたら、家族に手伝わせるかもしれないからダメって言われてさ。授業中真面目にやってれば、提出期限には充分間に合う筈だって。それも成績に影響するんだからって」

「家庭科の近藤って厳しかったもんねー」

「もし期限までに終わりそうにない場合は、放課後残ってやれって言われてさ。そんで私と他にも遅れてる子数人で、しぶしぶ居残りしたんだよね」

「あん時はごめんねー?付き合ってあげられなくて。でも私、部活の引き継ぎがあったからさー。文化部って引退時期があってなきが如しだから」

「別に良いよ今さら。そしたらさ、被服室にちょうど綿貫が居て。アイツ手芸部でそこが部室だったから。内心『ラッキー』と思ったよ」
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