痛々しくて痛い
俺はギクリとした。


『ちょっとだけ仲良くなれたから…』


綿貫が心底嬉しそうに語っていたエピソード。


「『ねぇねぇ綿貫さん、ここ分かんないの~』とかいって擦り寄ってみたら、思った通り、いそいそと私の世話を焼き始めてさ。そんで別の日には『この後塾があるんだよなー…』なんて呟いてみたら、キリの良い所まで進めとく、なんて申し出て来て。結局最後の方はほとんどアイツに押し付けちゃったよ」

「えー。そーだったの?ズルイやつ!」


あれはズバリ、この事を言っていたんじゃないのか?


「もう時効だもんねー。だってさ、マジかったるかったんだもん。調理実習はまぁ良いとして、何で授業で被服なんか学ばなくちゃいけないの?割烹着だのパジャマだのマフラーだの、作らなくちゃいけないワケ?そんなん金出せばいくらでも手に入るじゃん」


綿貫の中では、すごく良い思い出として残っているのに…。


「そうそう、裁縫や編み物ができなくても、その後の人生に別に大した影響はないしね。それに正直、ド素人が作った手作り品って超絶にダサいし」

「そんなん身に付けるのなんてはっきり言って罰ゲームじゃね?だからマフラー作りはホントに苦痛でさ。あのグループには散々イライラさせられて来たんだから、こういう時くらい役に立ってもらわないと、と思ってさぁ」

「いい加減にしろよ!」


そこでようやく俺は二人に意見する事ができた。
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