痛々しくて痛い
俺の『ワンスモアプリーズ』を華麗にスルーすると、陣内はチラリと腕時計を確認した。


「そろそろ戻るわ」


そして俺に視線を戻し、穏やかな口調で話を進める。


「今さら幹事役を投げ出す訳にはいかないからな。あの二人のフォローもきっちりしておかないと」


「…ゴメン」


心の底からの謝罪を口にする。


「場の雰囲気をぶち壊すだけぶち壊して、陣内に嫌な役目を押し付けて逃げちまって」

「いや。あのままお前があそこに居続けたら、さらに収拾がつかなくなっていたかもしれないし。むしろ、第三者が間に入った方が良いだろ」


しかし陣内は俺に気を使わせない為か、あっけらかんとした口調で返してくれた。


「そろそろ吉田も落ち着いて来た頃だろうし」

「でも…」

「それに、俺こそ謝らなくちゃな」

「え?」

「お前が今フリーだってこと、吉田に聞かれるがままに、深く考えずに答えちまったから」

「ああ…」


そういやその事にも引っ掛かってたんだよな。


でも、それどころじゃなくてその件はすぐに流しちまったけど。


「だから今回は俺がどうにか場を治めとくよ。それでチャラにしてくれよな」


陣内はニッと笑みを浮かべた後、「じゃ、また」と言いつつ手を上げ、素早く踵を返した。


「ああ、またな」
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