痛々しくて痛い
「あ、慧人オハヨー!」


その間に、視界の端に姿が映り、俺の存在に気付いたらしい颯さんが、笑顔で陽気に声をかけてくれた。


「おはようございます」


続けて綿貫も振り向き、同じように挨拶。


「…おはよう、ございます」


何とか自分を取り戻し、そう言葉を返しながら、俺は自分のデスクへと歩を進めた。


「あ!ヤバ!水汲んで来なくちゃ!」


すると颯さんはハタと気付いたようにそう叫ぶと、慌ててカウンターへと近付いた。


「茶器当番だから早く来たのに、愛実ちゃんとのおしゃべりに夢中になって、本来の目的をすっかり忘れてたよー」

「あ。す、すみません…」

「え?違う違う!オレが勝手に一人でエキサイトしちゃっただけだから」


ポットとやかんを手にせかせかとドアへと向かい、ノブを器用に操って開きながら颯さんは言葉を続けた。


「じゃ、ちょっと行ってきちゃうね。あ、後でそれ樹さんに渡すから、愛実ちゃん預かっておいて」

「分かりました」


彼が疾風のごとく去って行き、室内には途端に静寂が訪れた。


「……随分楽しそうだったじゃん」


しばし無言で端末を立ち上げ出勤の打刻をしたりしていたが、どうにもこうにも気になって、俺は透明のクリアファイルに挟まれたA4サイズの紙を両手で持ち、ニコニコしながら眺めていた綿貫に話しかけた。


「え?うん」
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